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2026/7/17 【開催報告】「お寺で対話 地域で支える終身サポート」(沖田都光)

去る2026年7月17日「お寺で対話 地域で支える終身サポート」を開催いたしました。このプログラムは「高齢者等終身サポート」について、市民・社会福祉協議会(社協)・寺院・民間事業者など多様な担い手が集まり、それぞれの特性を相互に理解しながら、地域における持続可能な支え合いの基盤づくりをともに考えることを目的に企画されました。国からのガイドライン制定など整備も進められており、各地域の社会福祉協議会や終活事業者などで動きが広がっています。もちろん一様に解決できるものではありませんが、多くの寺院の集まる天王寺ならではの一歩として、このような会を開催できたこと、ご協力とご参加くださった皆さまに改めて御礼申し上げます。特に当日は、多くの寺院関係者にお集りいただけたことを大変ありがたく思っております。

冒頭はイントロスピーチにて、秋田光彦住職より「お寺の地域資源の力」と題し、天王寺区の寺院密度の高さと、ともなう社会基盤の貢献やこれからの期待を語りました。制度やサービスは確かに充実しているはずであるが、孤立は減っていないという現状、誰か決まった立場から「支援する&支援される」だけの関係性ではなく、相互に関わり合うことによる関係性の編み直しが必要であり、それはお寺本来の在り方に近しいということを秋田は指摘されました。190ケ寺の集まるこの天王寺区で、終身サポートを単なる制度・サービスに終わらせるのではなく、ある種の実験場(リビングラボ)として多くのプレイヤーと問いをもち、共創していくことができればと語りました。

そして、このたびの共催パートナーである一般社団法人つむぐ代表の長井俊行さんより「地域における終身サポートをめぐる 現状と課題」についてお話いただきました。健康な時期から病や老いを経て死にいたるまでの道のりに、どのような暮らしの変化があり、そのために対策しておくべき事柄があるか(例えば見守り・介護、身元保証・死後事務委任、相続関連など)をご説明いただき、これらの実働や負担はいつか自分に向いてくること、さらに単身高齢者が約4.5人に1人の割合である現在、どれほど暮らし全体に不安をお持ちの方が多いかは想像に難くありません。家族がいても疎遠だったり遠方に住んでいたり、負担をかけられないと思われる方も多く、実際パートナーに先立たれるとすぐに頼れる先のない暮らしになってしまうのです。制度は徐々に追いかけてきているものの発展途上の段階であり、窓口それぞれは機能していても、入口がわかりにくいという意識は強いようです。相談にきてくれる方はまだよいのですが、それは氷山の一角で、水面下にはずっとずっと多くの支援につながれない方々がいることを考えていかねばならないというお話でした。最後に、支援につながりにくい3つの壁として「物理的アクセスの壁」「心理的なハードル」「関係性の空白」を挙げられ、誰がどのようにその壁を下げ、受けとめる役割を担えるのかというところで、第2部にうつっていきました。

つづいて第2部は、サポート事業者・社協・寺院のそれぞれの立場で、相談窓口やつながりづくりの支え役を担っている3名の女性担当者からお話をいただきました。

まずは、一社つむぐの坂本千絵さんより自己紹介と日々のお仕事の様子から考える課題をお話いただきました。坂本さんは日頃は深海魚のようにもぐって仕事しているということで、このように表立って参加することは本当に稀であるとお話されましたが、明るく誠実なお人柄が伝わってきて、場が和ませながら進めてくださいました。実際にあったケースとして、いとこ同士(相続権がない)/子どもがいない夫婦/おひとりさまのそれぞれにどんなお困りごとを抱えておられるのかをご紹介いただきました。だれが相続するのか、もしくは相続人がいない場合どうすればいいのか、医療や介護の判断をしてくれる人の不在、お墓やお葬式の問題、そもそも相談できる人がいない等、多岐にわたりました。生前整理や死後事務も昨今さらに煩雑になっており、どのような専門家に依頼すればスムーズであるかもご説明いただくことができました。会場の方々も、身近にある事例だと思われたようでうんうんと頷きながら聞いておられました。

次に、天王寺区社会福祉協議会にて見守り相談室の担当をされている、優しい笑顔とハキハキとしたお話で安心感のある、谷みどりさんにお話しいただきました。見守り相談室は大阪市各区に設置されていますが、天王寺区独自の取り組みとして、介護サービス等の公的サービスを利用「していない」75歳以上のお一人暮らしやご高齢者を対象に、事業のお便りを出し、地域ボランティアによる見守り訪問を行っておられるそうです。方法としては、行政の把握する「要援護者情報」をもとに、本人の同意確認を行い「要援護者名簿」を作成し、地域における日頃の見守り活動や災害時の避難支援の準備などに活用するという流れです。(見守り相談室のHPはこちららhttps://yuuai.org/senior/mimamori/)しかしながら、このような仕組みはあっても、支援・登録につながる方は一部に限られており、まだまだ普及につとめていきたいというお話もありました。住民側から「支援はいらない」と言われてしまうとこちらも動けず、またせっかく動き始めていても、途中で何度も振り出しに戻ってしまうことも少なくないそうです。地域のボランティアの存在の大きさや、ご近所同士での見守り合いが有力であることも語られました。地道な働きかけに頭の下がる思いがしました。

そして、大蓮寺窓口業務を担当する沖田都光より、少し頼りないくらいのほうが初めてこられた方には気楽になっていただけるという自己紹介よりはじめ、大蓮寺がの2014年からの「生前契約サポート」や、2018年からの「おてら終活プロジェクト」「まちの保健室」などをご紹介しました。大蓮寺がサポート事業者との連携で「3人だけのお葬式」を行った秋田住職の体験を紹介し、死後の在り方を託す相手のいることの安心さ、知らないままに放置されていくのではなく、しっかりと意思をつなげることができる例としてお話しました。これはお寺の弔いや供養を軸とした檀信徒との宗教的なご縁といえますが、一方で、多様な立場の方々との協働や、自分らしく生きることにつながるどなたにも開いた学び舎としてのお寺の役割、お祭りやアートなどの文化的な側面などの社会的なご縁もまたお寺の在り方のひとつです。これらが往還しあうことで社会全体への発信や実働を発揮でき、お寺独自の連絡ツールや関係性を活かしながら、このたびの終身サポートにも貢献できる可能性があるのではないかと語りました。また、制度だけが進んでいくと、お葬式の簡素化や法事の減少も加速する危機感もあり、お葬式を短縮せずに行ったご家族のその後の通院介護にかかる確率がさがったという研究結果や、読経を聞くだけでも学生のストレスが下がるという研究結果が出ていることもご紹介させていただきました。

経文聴取による不安低減効果-宗教的要素が与える影響-/2023-2024 (東北大学大学院文学研究科宗教学研究室)
死別悲嘆の医療福祉負荷とその要因解明:大規模日本追跡調査及び国際比較/2018-2022 (京都大学, 政策のための科学ユニット, 研究員)

第3部は会場全体ワークショップにて、3つのグループそれぞれに、日頃からある気づきや困難に感じておられること、支援につなげる道筋や難しい場合のことなども話し合われました。「うちのお寺でもこのような方がおられて‥」「困ったときだけ頼ってこられるとだんだんしんどくなる」「社協も地域包括もまだ知らない人もいる」「個人情報をきくこともためらいがある」「お金がかかる」「結局本人が決めなあかん」などいろいろな意見が交わされました。

なお、このたびの会に飛び入りで参加くださった川原 諭さんに、グラフィックレコーディングをお任せすることができ、会場の熱量そのままに内容をスピーディに絵と言葉でまとめてくださいました。

まとめとして、天王寺区社会福祉協議会の坂根浩幸事務局長よりコメントをいただき、普段なかなか出会えない方々と、このようにざっくばらんに語り合える時間ということはとても貴重で何より楽しかったと仰っていただきました。日頃の仕事のなかでは「社協でこれ以上どうしたらええっちゅうねん」と思うようなこともあるそうで、社会福祉協議会や地域包括支援センターを頼りにされることはいいことではあるけれど、もっと住民ひとりひとりが意識をもって、自分自身のこと家族のこと、身の回りのひとへの温かい目線で、地域全体を見守り合うことができればと協働の必要性を感じました。現在天王寺区は住民が年ごとに800世帯以上が増えてつづけており、かつ集合住宅(タワーマンション)の多く、孤立支援のむずかしさが大きいそうです。高齢者の一人住まいも増え続けており、いかに氷山の水面下の方々にアプローチするかが重要であることがわかりました。今後もお寺の可能性を探りながら、多様なセクションとともにサポートしあえる関係性づくりに励んでまいりたいと思います。