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2018/10/31 インタビュー連載「應典院モニターレビュアーに聞く」第2回:室屋和美

NPO應典院寺町倶楽部との協働により実施しているモニターレビュアー制度。発足から1年以上が経ち、浄土宗應典院で行われる企画について、この間さまざまな方からレビューをご寄稿いただいております。このインタビューは、應典院を定期的に観測いただいているレビュアーの皆さんからお話を伺うもの。第2回は「劇作ユニット野菜派」を主宰されている室屋和美さん(劇作家・役者・WEBライター)にご登場いただきました(文責/寺務局)。


――二朗松田さんにつづく第2回となります。どうぞよろしくお願いいたします。前回もお聞きしたのですが、普段はどういった活動をされていらっしゃいますか。

室屋 「劇作ユニット野菜派」っていう所属があって、女性の劇作家で集まって台本を書くサークルです。今はメンバーが忙しく、個々で執筆するだけになってますけど。普段は主婦で、うちは演劇と家庭を両立しましょうという方針なんです。稽古期間が長い公演への参加は全部断っているので、どうしてもイベントが中心になるんですね。自分でスケジュールが組めるものということで、バーで官能小説を朗読するイベントばっかりやっていたら、最近は「官能小説のひと」と呼ばれるようになりました(笑)。

――もともとは、應典院で開催されていた演劇祭「space×drama」で、2010年度の優秀劇団に選ばれた「コトリ会議」に所属されていたんですよね。

室屋 そうです。2011年の應典院で、このレビュアーにお声かけいただいた泉寛介さんの劇団「baghdad café」と「コトリ会議」の合同公演を見たあと入団したので、應典院がきっかけと言ってもいいくらいです。役者修業として入って4年ぐらいいたんですけど、役者そんな上手くないな…って気づいたんですね。忙しすぎて家庭との両立が難しくなったこともあり、また改めて劇作や演出の勉強もしたかったので円満退社したかたちです。

――さて、應典院モニターレビュアー制度がはじまって1年以上になります。1年前の時点で、應典院の印象っていかがでしたか。

室屋 当時、自分にとっては演劇の劇場という印象しかなかったんですが、ただなんかお地蔵さんがいたような気はしていて(笑)。演劇の時の本堂しか入ったことがないから、奥にご本尊の阿弥陀さんがいらっしゃるのも知らなかったですし、立派な大きい劇場やなと。ただ、ここは普通の劇場だったら必ずいらっしゃる小屋付きスタッフはいてはるのかな?どういうことだ?みたいな空気は感じていました。

――室屋さんはこれまで7つのレビューを執筆してくださっています。無名劇団「私戯曲 りんごのうた」(2017年11月)、彗星マジック「花の栞」(2018年1月)、應典院再建20周年記念シンポジウム(2018年3月)、Forum Enter The Theatre(FETT)#0「ヤミウルワシ」(2018年3月)、まなびのカフェvol.2「夫源病予防のためには~熟年離婚の遠因となる産後クライシス~」(2018年7月)、FETT #1「供犠」(2018年8月)、Micro To Macro「ワンダー三日月リバー 〜46億年の奇蹟の話〜」(2018年10月)ですね。室屋さんのレビューに対する印象として、わかりやすく的確に内容をまとめてくださって、しかも大変ユーモラスに書いてくださる。あとは演劇公演以外にも、記念シンポジウムなど「演劇の應典院」以外の姿にも、関心を見出してくださっている印象があります。

室屋 演劇のレビューなら、應典院・仏教関係の方以外では、ごりごりの演劇関係者と当日のお客さんが読むだろうと意識はしています。きれいな感想にするんじゃなくて、「あ~、それ私も思った!」みたいな感情が引き出せたらと思って、正直な気持ちを書いています。じぶんが最も引っかかったことを書く。FETT「供犠」の時は、「(臨床心理士の)先生のギリギリ聞き取れるか聞き取れないかの声量よ」とか「本気のカウンセリングの相手がキャラクターでいいの?」ということも書きましたけど、これは正直に書かなかったら嘘やろ!と。でも、ただの批判にはしたくないので、臨床心理学に詳しい友人に確認して、なるほど声が小さいのはお仕事上の必然性があるんだということも分かりました。そもそも先生は演劇畑のひとではないし、こちらが演劇の要素を求めるのも傲慢じゃないかと考えながら書きましたね。

「まなびのカフェ」なんかは、行く前にどういう気持ちだったか考えて、「カフェってことはコーヒーがでる?テーブル並んでる?参加者同士のディスカッションとかあって、肩身の狭い思いするかな?」と思い出して(笑)。参加する前に感じた「こわいな」っていう気持ちをとどめておいて、はじめて参加する人の目線で書いてみました。基本、最初「こわい」から入るんです。一般の方がはじめて演劇見に行く感覚も一緒だと思いますよ。

そうそう應典院ってね、劇場だけでもハードルが高いのに寺じゃないですか!(笑)。寺でしかも劇場というのは、受け皿がふたつあるとも言えるけど、ハードルがふたつあるとも言えるので、なるべく優しい文章で身近なところから伝えたいと思いますね。そして、参加できなかった人にも「こんなかんじやったら行けるわ」って思ってもらえたら。

――中でも、特に印象に残っているレビューとかありますか。

室屋 應典院再建20周年記念シンポジウムは、むずかしかった…。最初のお念仏でびっくりしましたね。「うわ、應典院、お寺やったんかー!」という衝撃ですよ(笑)。

――(笑)。実はあのシンポジウムに来られてる方のほとんどは、應典院で一度も演劇を見たことがない方々なんです。その反対に、演劇関係の方はあまり應典院でご本尊やお坊さんを見たことがないし、お念仏も聞いたことがない。以前、宗教学者の釈徹宗さんが「應典院の全貌を知ろうとしたら大変。ちがうジャンルの場に通い続けないと應典院は分からない」とおっしゃっていました。ある意味ハードルは高いだろうし、だからこそ学び甲斐があるとも言えるかもしれませんが。

室屋 まず應典院に来られている方で、中をぐるっと一周したことのある方も少ないんじゃないですか。ここがお寺だってことがよくわかったので、私にとってシンポジウムは良い機会でした。えっと、普段はご本尊を隠してるんですかね。

――いえいえ、公演が入ってないときは普通に参拝できますよ。時々、急にお坊さんがお参りに来られることもあります。

室屋 なるほどなぁ。演劇の方には仏教の面白さをわかってくれ、お坊さんには演劇見てくれって、無理してならなくていいと思っています。應典院には選択肢、受け皿がたくさんあって、それは今後のお楽しみに取っておいてもいいんじゃないかなと。

私、60歳くらいになったら急に仏教に目覚めるんじゃないかと予感しているんです(笑)。年をとって韓流や朝ドラにはまる方も多いですけど、そういう時に應典院を見つけたらラッキーですよ。シンポジウムも私には難しい部分もあったけど、後になって「あれ、面白かったな」ってなるかもしれない。あの時聞いたこれ、今につながってるよねっていう。レビュアーをやってるのも、たぶん10年後に「これだったのか!」ってつながるんじゃないかな。今はまだわからないことばっかりです。

――レビューを参考にして来てみましたという方、実際いらっしゃいますね。

室屋 うれしいです。まずは應典院に興味を持ってほしいですよね。「演劇を見に来て、哲学をだべって、帰りにお地蔵さんに手を合わせる、そういうお寺があっていいんじゃないか」って書きましたけど、應典院はホーム感がある学び舎というか、いつでも来てねっていうイメージ。他の劇場とはちょっとちがって、プラスアルファがたくさんある場所なので、まずは好きな門から入ってみて、視野が広がったらいいなと思います。

――ありがとうございました。最後にひとことお願いします。

室屋 あえて「應典院はこのままでいい」と言いたいです。演劇にしろ仏教にしろ、道を求める人が来てくれたらいいので、一つひとつの門は狭くてもいいじゃないかと。今と変わらず、今後も色んな年代の人の受け皿になっていただけたら。でも、應典院ならではの終活やお葬式の話は面白そうですので、私がおばあちゃんになった時も参考にしたいし、見届けたいなと思ってます。「應典院、またおもろいことやってるな~」って注目しながら、私もレビュアーとして今やれることをやっていきたいと思います。

○レビュアープロフィール

室屋和美(むろやかずみ)

劇作家・役者・WEBライター。1984年兵庫県神戸市生まれ。
近畿大学演劇芸能専攻・劇作理論コース中退。
2012年から『劇作ユニット野菜派』を立ち上げ。
以前は『劇団八時半』『コトリ会議』などに所属。
劇作家の活動として、戯曲「どこか行く舟」がAAF戯曲賞佳作を受賞。
世間のさえない領域で静かに呼吸している小魚のような、ひそやかな人々とその切実さを好んで描く。

◇近年はご依頼をいただいて劇作をしたり、大喜利や官能小説のイベントに出演したりしています。
趣味はマンガを読むこと、お笑いの舞台を見ること。
小さな畑の世話もしています。いつでもなんでも気軽にお声かけください。

Twitter: @ooiri_muroya

◇活動告知

※毎年盛況の一人芝居フェスティバル「INDEPENDENT:18」に参加します。
脚本は室屋和美、演出は大沢秋生さん(ニュートラル)、役者は是常祐美さん(シバイシマイ)です。
豪華なユニットが競演するこの機会をお見逃しなく!

最強の一人芝居フェスティバル〈INDEPENDENT:18〉

日程:2018年11月22日(木)~25日(日)
※私たちはユニット〈d〉として参加。
23日20時~、24日19時半~、25日13時~のブロックに出演します。
会場:in→dependent theatre 2nd
大阪メトロ堺筋線 「恵美須町」駅1A出口 右手(北)5分

詳細:http://independent-fes.com もしくはインディペンデントシアターHP

 

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