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2019/3/4 應典院寺務局:おてら終活カフェ第7回「知っていますか?お墓の色々〜京都での実践から思う「眠る」ところ」を開催いたしました

春の気配を感じはじめ、街を歩く足並みも軽やかになってきました。この日は、あいにくの雨模様、傘を片手に裾を濡らしながらもお集まりいただいた皆様と「おてら終活カフェ」を開催いたしました。少人数のご参加でしたが、お互いの声を聞き合う濃密な時間を過ごす事ができました。

今回の講師である山崎譲二さんは、お父さまを亡くされた悲しみから「手元供養」を発案されました。小さな可愛らしいお地蔵さんの陶器の中に、少量のお骨を納めることができ、リビングの片隅に置いていつも近くに存在を感じることができる画期的な供養方法です。その他、主に京都のお寺の樹木葬を多く手掛けていらっしゃいます。樹木葬は、費用が抑えられる上、日本人のもつ「土に還りたい」という想いにも応えられるため主流になってきています。このように、遺族の思いに寄り添いながらも、余生が長く葬儀やお墓に対するモチベーション自体が低くなっている現代の事情を鑑みながら、「継承を必要としないお墓」について精通していらっしゃる山崎さんにお話を聞かせていただきました。

 

 

山崎さんが実際に行った調査の結果、お骨をすべてなくしたいと言われる方は、15%に留まり、なんらかの形で残される方が80%を超えるそうです。そのような方の多くが「継承を必要としないお墓」(永代供養墓、散骨、樹木葬、手元供養)を選ばれています。

また、樹木葬を決められた方への調査で分かったのは、自分自身で決められたのが56%、おつれあいを亡くされて決めた方が30%、合計で86%の方が「生前に」契約されているということです。そのうち40%が入るべきお墓をもっており、76%が子どものいる方だそうです。年齢としては、60~70代が75%、50代&80代が10%、合計で85%が50代以降の方ということになります。現代は、還暦を迎えた頃から、子どもに負担をかけないお墓を求める時代になったことがわかります。

しかし、この「負担をかけたくない」という想いの中には、「ちょっとはお墓参りをしてほしい」という願いも含まれているというお話がありました。無縁にはなりたくないから、手間がかからず、交通至便もよく、周囲に観光できるような立地のお墓を選ばれる方が多いそうです。そのような中で、お寺のもつ「信頼できる墓所の管理者」として役割が再認識されはじめています。長い年月をかけて歴史と伝統を培ってきた「お寺のお墓=安心感」を選ぶことが現代の主流になりつつあると仰いました。「お墓選び=あの世の住まい選び」として考えられ始めているのです。

お墓について山崎さんがまとめてくださったのは次の点です。

<お墓に求められていること>

  • 継承する必要がない
  • 費用がかからない
  • 日本人の死生観に基づいている

<お墓を選ぶということ>

  • あの世の住まいを選ぶ
  • 家族の拠り所であり、多様性をみとめるもの
  • 将来への安心感につながる

 

 

山崎さんのお話のあとは、應典院住職と主幹が加わりました。山崎さんと住職は2002年に應典院で行われた「エンディング見本市」という先駆的なプログラムで、手元供養がスタートした時から関わっておられます。また東日本大震災にて、手元供養の必要性を感じた山崎さんが住職に相談をしたというお話も心に残りました。そんな長いお付き合い中、昨年9月に、山崎さんの手がけられた新しい永代供養墓で、大蓮寺と應典院が協働で開創した【自然納骨堂<縁>】についてご紹介いただきました。宗派を問わず、生前にお求めいただける開かれたお墓です。お一人様用と、どのようなご関係でもお入りいただける、お二人様用があり、自然の光や鳥の声を感じながら眠る、隠れ家のような素敵なお墓です。

 

 

最後に、会場のテーブルを繋げて参加者の皆さまと意見交換をしました。様々なご意見があった中、お寺である應典院として嬉しいお声がありました。

「お寺は非日常の場。社会から切り離され、お線香の匂いと静けさがある落ち着く場。まずは足を踏み入れた瞬間に“五感”でわかる空間であることが素晴らしい。そしてその中に、教えがある。人生を教えてくれるという気持ちよさがある。」

お寺には、社会に合わせて変わっていく必要性があるとともに、変わってはならないところもあるのではないか。「不易と流行」を追い求め、皆様に心から安心と思っていただけるお寺づくりに、背中を押された時間でした。

 

人物(五十音順)

山崎譲二
(博國屋 店主、カン綜合計画 代表取締役)