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2018/12/10-2019/11/7 應典院寺務局:『寺業構想IN應典院 第2回・第3回』を開催いたしました。

永代供養セミナー『寺業構想in應典院』これまでの振り返り

 

昨年より2年連続で開催いたしました「寺業構想in應典院」。各地から”永代供養墓”を中心に据えた先鋭的な取り組みを拡げている寺院の方々に実際にお越しいただき、活動の紹介をしていただくという大変濃密な時間が繰り広げられています。すべてを報告することは到底かないませんが、当日の流れや印象的なお話をまとめまして開催報告といたします。

神奈川・埼玉・山口から事例紹介~強いお寺をつくる秘訣~

 

第2回は「永代供養墓をめぐる現在の状況・最新のつくり方」と題して、礼拝空間デザイン室TSUNAGUの礼拝空間デザイナー森口純一さんより、一過性のお墓ビジネスがお寺を短命にしている事実、海外で注目されている日本式のお墓のスタイル、また、持続可能なお墓の在り方、などの切り口からお話がありました。

その後、神奈川県の妙法寺・久住謙昭住職より、「人生のコンシェルジュ」のように、檀家さんお一人おひとりへ、顔のはっきり見える対応、感謝を伝えながら親しみやすいアプローチを進めている日々をお話しいただきました。特に檀家さんの情報がすぐに記録・把握できるセキュリティソフトを取り入れていることは画期的でした。先代のご住職(お父様)を早くに亡くされ、右も左も分からないなか、ご自身を奮い立たせ、日蓮宗の教えを胸に一歩ずつ進んでこられた姿が、久住住職の明るくも頼もしいお人柄に現れていました。

続きまして、埼玉県の立正寺・鈴木俊也住職のお話。在家から僧侶になり、無住寺院だったお寺を任された鈴木住職。檀家さんがいない状況から、お墓の整備を進め、気軽に「相談」できるお寺として広報を進めるなか、檀家さんがだんだんと増えているというお話が印象的でした。郵便局やコンビニエンスストアに看板を設置するなど、地域の方の目に入りやすい方法を模索されたそうです。また、法話の記録集をつくり、誰にどのようなお話をしたか、ご家族の情報などを書き留め、きめ細かい対応を心がけている鈴木住職の優しさ、癒されるような時間の使い方に感動を覚えました。

最後の事例紹介は、山口県の瑞相寺・三谷彰寛住職。「依存しないお寺運営」ということで多角的かつ広域的な運営をご紹介いただきました。まず第一に「お念仏」。お寺が人生の支えになるという明確な意識をもつこと。そして、これまでの瑞相寺の伝統どおり「護寺会費、年会費、管理費、寄付、入檀離檀料等は無償」を皆様へはっきりとお伝えしているそうです。お布施の金額は一切問わず、真心のこもったご供養をすること、また時代を見定めながら地域とともに社会問題に取り組む姿勢を貫く、という潔くも熱意あふれる住職の語りに、お寺の未来を感じました。

当日は、満席のご参加があり、「永代供養」に対する注目の高さを垣間見ることができました。劇的に変容していく時代のなか、守りつづけることと革新していかねばならないことを見定め、丁寧にデザインされた寺院の取り組みに感嘆しました。会場からも真剣にメモをとられる姿がたくさん見られ、深い頷きを感じ取ることができました。

「鳥取県 過疎寺院の逆襲」と「青森県一番の樹木葬霊園」

そして、去る11月7日には、第3回「永代供養墓リアルな運営報告会・2019年永代供養墓 最新のつくり方」と題して開催されました。まず森口さんより、永代供養墓がハイスピードで変化を遂げていること、しかしまだまだ一般市民の方々はお寺に対して馴染みがないこと、「やさしくて分かりやすい頼りになるお寺」を望まれていることを強調されました。また、新たな動きとして、社会福祉法人が宗教法人と共同して介護施設内にお墓を設営するケースが増えてきているそうです。後にも言及されましたが、この「寺業構想セミナー」も、去年と今年の内容が全く違うフレーズに入っていることを感じ、「お寺が選ばれる時代」になってきたことが伺えます。

 

続いて、鳥取県・光澤寺の宗元英敏住職からの活動紹介をいただきました。キーワードは「Eternal Residence《永久なる滞在》」。永代供養墓は「ただお骨を納めるだけじゃない、ずっと一緒に暮らすということ」との視点からスタートされました。50歳で、まさに廃寺寸前のひどい状態だった自坊に戻って来られて、明けても暮れても掃除だった日々。過疎地のお寺には銀行からの融資も受けられず、すべて自前で行ってきた「宿坊」と「永代供養墓」「やずブータン村」のはじまり。この数年トップギアにあげて走り続けていると仰る宗元住職の語りから、”覚悟”の文字が浮かび上がりました。過疎地寺院の困難については各宗派でも問題に挙がっているが、この10年何一つ対策は出ていないこともあり「都市部から永代供養を呼び込む」しかないという思いに至ったといいます。また、宿坊では1日1組限定(お1人~50人グループの時もある)で、食事や宿泊にかかるすべてを住職と坊守さんでこなし、夜は「本堂深夜Bar」を開催。せっかくだから少しだけ‥と言っていた方も気づくと朝方まで話し込んでいることがほとんどだそう。「心の授業」と題した住職の法話はキラーコンテンツとして皆さまから大好評を得ています。たった一泊されど一泊。仏様を前に疲れた心を癒し、ウソをつく必要のない「ありのままの自分」で居られる時間を過ごすことで、人生が変わる。そのような体験によって、きっと光澤寺が”心のふるさと”になるのだろうと感じました。この場所で永久に眠りたいと思う人々の気もちに深く納得いたしました。

次は、青森県・専求院寺庭(坊守)の村井麻矢さんより活動紹介をいただきました。美しい花々の名を付けられた4種類の樹木葬永代供養墓を「アラマチ浄苑」と呼び、親しまれています。ご住職と村井さんが何年もかけて学び、計画され、6年前に完成しました。特徴としては、檀家にならなくてよい会員制度を設けていること、8割以上が生前契約、ペットと一緒に入れるお墓、使用許可証を目立つよう大きくしていること、分割払いでも受け付けられるなど、現代の事情をよく鑑みておられます。今では「専求院」ときくと「あの樹木葬で有名な・・」とすぐに上がってくるほどになったが、これまでの道のりは大変なものでした。先代のお寺の私物化、突然の住職拝命、お姑さん問題‥。寺庭の仕事について全く知識のないまま嫁がれた村井さんに、「私が死んだらよろしくね」という檀家さんからの声にカルチャーショックを受けたこと。しかし、村井さんは立ち止まりませんでした。誰でも気軽に来られる夜祭りや、お盆での名物かき氷、餅つきにヨガ教室、寺JAZZ、怪談噺などなど、次々と「仏教に触れてもらう機会」を計画していきました。中でも「終活」という言葉をキーワードに、終活カウンセラーの資格をとり、今では各地での講演依頼も後を絶えません。そこには、住職ではない「寺庭だから」、「女性だから」ということが、気軽に相談できる存在として映るのではないかという指摘がありました。

 

最後に、秋田住職のまとめで、会場をグループに分け、ワークショップの時間を設けました。下記のようなキーワードがあがりましたので、これを最後に開催報告を終えたいと思います。

・永代供養墓はゴールではなく「インセンティブ(誘因)」
・何を目的にしているのか言語化することの必要性
・人は想像以上に移動している(モータビリティ)
・宗教的滞在の熱量(レジデンス)
・お寺の家族(寺族)をいかに一人のスタッフとしてとらえ直すことができるか(人材教育・人的資源)