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2018/11/3-11/5 白井宏幸:冗談だからね。『冗談だからね。の本当にマジでごめんな祭』 レビュー

去る11月3日から5日に、冗談だからね。『冗談だからね。の本当にマジでごめんな祭』(應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2018参加作品)が開催されました。演目を変更しての開催となった今公演に、様々な目線で注目が集まりました。今回は、ステージタイガー所属俳優の白井宏幸さんにレビューを執筆していただきました。


 

お昼ご飯を食べて劇場へ。
今回はちょっとしたお手伝いをするために。どのくらいお力になれるんだかわからないなりに、受付に入る事になりました。受付といえばお金をいただいて、チケットを確認してあちらです、とか、こちらです、とか。お手洗いはこちらですなど。そういった、お客様に気持ちよく、来ていただいて、いていただいて、お見送りするお役目です。
これが、しっかりとした準備や経験がないとなかなか難しい。いつも劇場に行くたびに心地よく迎えてくださる方々には本当に頭が下がる思いです。

さて。
急いで走ってしまったので少し汗ばんだ状態で、劇場にはいる。まだまだ、件の団体さんはお稽古の真っ最中。少し予定よりも長引いている様子。
劇場の繁澤さんと、満月動物園の河上さんと合流して、なんやかや打ち合わせのような雑談のようなお話をしていると、若い男の子がやってきて、早口に謝ってくれる。

「ご迷惑をおかけいたします。」

いや、僕は特別ご迷惑を被ったわけではないのでありますが、彼はそういう気持ちを伝えたいのでありそうなので、なるほどそうですかと。でも、まだ、迷惑被ってないよと。でも伝えたい気持ちがはやっていたんでしょうねと思いまして。また、今度会った時に思うことはお話しできたらなって思います。

11月3日(土)
15:30~ 「公開稽古~こんなんになるはずでした~」
17:30~  バーベキュー演劇
19:30~ 『誰も知らない。』 +『援助交際』

こういうスケジュールの1日をお手伝いして、15:30の公開稽古を拝見させていただきました。(その他の回は、ありがたいことに予想を上回るほどのご来場、当日券のお客様が多く、なるべく対応できるようにしておこうと言う考えで、諦めました。)

企画に対してアレコレ言うのは完全に後出しジャンケンなので、あぁすれば良かったのに、とか、そう言うことを抜きにするならば、単純に稽古不足な公開稽古を見てしまったと言う事に尽きます。
結局、背景を引きずってしまうのだけれど、ある程度はキチンとお稽古をしたものを見せて欲しいと思うのです。本番は。
ここに至った経緯や、結果無料の公開稽古とはいえ、稽古を積んできたはずの俳優たちが、ふわふわと台本を読んでいる様をみるのはなんだかなぁと思ってしまったところはありました。

ただ、台本は面白いなと思って見ておって。

1つには、学祭でする演劇のなかで何をするのかを考える高校生の議論。
1つには、保護者側の出し物を何にするかを考える議論。

その議論の途中で、親子が「なぜか死んで転生して」配役が入れ替わり、その性格が入れ替わったままで議論が展開されていくという設定。
強気な女性とのお母さんが、人前で上手く話せないようなタイプの人間で、それが入れ替わってしまうものだから議論もまた行く末がわからなくなっていく、というお話だと思います。
学生パートを稽古してみせて、保護者パートを稽古して見せて、その次に二つのパートを同時にやって見せることで、台本上は二つの音楽が重なり合うように、絶妙な間が生まれたりセリフが重なったりする「予定」だったようです。
ここでわかったことは、やはり、出来上がったものを見たかったということ。
それと同じくらいに安保さんが(冗談だからね。の主催の安保泰我さんが)「見せたかったんだなぁ」ということ。
出演者が降板して、劇団員の津嘉山珠英さんが代役をして、それでさえも、やっぱり自分が書いた、面白いと思うものを見てもらいたかったんだろうなということがよくわかりました。それが完成されたものでないにせよ、その作られていく劇を演出というよりは一番の観客としてみている安保さんは、いうまでもなく、ガキンチョであり、青春真っ只中のキラキラとした眼差しで、誰よりもゲラゲラと笑って、うらやましくもあり「いいよ、もう反省なんかしなくったって」という気持ちになった。

もし、今日を過ぎて、何か聞いてくることがあったら、直せるところの100は言ってやりたいと思うけれども、今日ばかりは楽しめばいいと思う。
最中に怒ってくれる人も大切だし、次の日以降にきちんと叱ってくれる人がいるならば、その人にもきちんとお礼をするとよい。
会うことがあって、その時に僕は覚えているかわからないので、この場を借りて書かせていただきました。

自分も、今になってすらいろんな人に迷惑をかけて、思い出しては叫びたくなるようなことがある。
読んでいる皆さんにも一つや二つの心当たりくらいあるんではないでしょうか?
好きな人への初めてのラブレターを官製はがきで書いてしまったあの時の僕に何と言ってあげればいいのか。

應典院の素晴らしさといったら、何とかしてやろうという大人がたくさん集まっていることなんじゃないだろうかと思う。
上演が危ぶまれている時に、僕の劇団にも「手伝ってやれないか」という連絡が回ってきて、今回のSpace Drama Next の参加劇団の幾人もが手を挙げ助けてくれていました。いつか彼らが、僕らくらいの年齢になった時に、そうやって若い人に手を差し伸べることができるようになってればいいなと思う。
で、それが、できることならば(僕自身も)演劇をしている人だから、という理由からではなくって、困っている人に、誰にでも、そうすることができればいいなと思うのです。演劇が生活の延長戦であればいいなと、僕個人としては思い、またそれ自体は難しいことだなぁと、まだまだ、勇気のなさを痛感するんであります。

次はきちんと見届けたいと思います。

―――

白井宏幸
ステージタイガー所属俳優

SHASEN × ステージタイガー
『スロウステップスマイル ~笑わない少年と家出少女~』

【日時】
2019年2月
2日(土) 19:00~
3日(日) 13:00~ / 17:00~

【会場】
あべのハルカス近鉄本店ウイング館8階 近鉄アート館

【料金】
一般 前売2,500円 当日3,000円
学割 1,000円(大学生含む、要学生書提示)
※ 全席指定席

 

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白井宏幸
(俳優、ステージタイガー所属)