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2019/11/28~12/1 たかはしみほ:DOORプロデュース⑦「てのひらに声」(應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2019)レビュー

去る11月28日~12月1日に、DOORプロデュース⑦「てのひらに声」(應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2019)が開催されました。私たちの身近にある、ケアの現場での出来事を題材にした、人とのつながりを対話や傾聴の力が下支えする親しみやすいヒューマンドラマ。今回は、劇作家・パフォーマーのたかはしみほさんにレビューを執筆していただきました。


作品を観た後、まず感じたことは・・・
こんな仲間がいる職場で働けたらいいなと思いました(笑)

作品は・・・
介護の職場の話。
この作品の冒頭は、デイサービスセンター『つながり』のセンター内で車椅子の転倒事故ではじまり・・・車椅子の転倒事故を起こした松井さんは自分を責めて仕事を続ける自信を失っていました。新しく転属してきた介護職員の近藤麻友は、苦しむ松井さんに寄り添い苦しい胸の内に耳を傾けました。松井さんは苦しかったことを一つ、一つ話しているうちに介護の仕事が大好きだった自分に気づきました。利用者の方が好き。笑顔を見ること、喜んでもらいたい気持ちがあるからここで働いている自分。麻友に話しているうちに「そういう自分」に気づけたのだと思います。

失敗した人間にレッテルを貼らないで真っ白な気持ちになって話を聴く。
ありのまま受け止めてくれる人がいること。
そういう存在がいるだけで、人って立ち直ることができると思うのです。
働く現場には必要な時間だと感じました。

と言いつつ現実は、「人の話を聴いてる暇があったら、手を動かせ!」
人手が少ない中、職員もストレスがたまっている現状、麻友のやり方に反発する職員もいて、ギクシャク。他の職員も懸命に施設の利用者に喜んでもらえるサービスを提供しようと思っているからこそ、麻友ともぶつかり合います。それでも麻友はココロ折れずに踏ん張り、お互いを知るために職場で話し合おうとしました。

人と人がわかりあえるまでの過程って簡単じゃないですね。
ぶつかって、もがくことが大事。
それでやっと、人と人の距離感が変わり、わかりあえる時がくるのかな。
麻友の真心は職場のみんなに伝わり、敬老会が終わるころには職員同士の垣根は取っ払わられました。

ある日、そんな麻友が利用者さんを乗せた車で事故を起こしてしまいます。
麻友の前の職場での良くない噂。麻友が仕事を続けられないぐらい苦しんだ出来事。
麻友は大学の先輩でもある西崎に自分の中に閉じ込めていた苦しい思いを話します。
自分のやったことが間違いだった。悔やんでも悔やみきれない思いを話すことで、やっとその時の自分を受け止めることができたのではないかと。
自分を許してあげられるのは、自分だけ。ボロボロになった自分のココロを労わる気持ちにずっとなれなかった。
麻友も人に聴いてもらう機会を持てたことで、自分を受け止め、労わることができたように感じました。

次の一歩を踏み出そうとする麻友を応援してくれた上司の坂東さんも、素敵でした。
私も、坂東さんのような上司と巡り会いたかったです(笑)
坂東さんは麻友の過去の悪い評判を聞いても動じず、麻友のことを人として信じ、守ろうとしてくれました。
今の職場である「ここが自分を正してくれる場所」と言う坂東さん・・・かっこよすぎです。

 

最後に思うこと。
働くということ、人と関わるということは、この世で生きている限り避けられない。
だから、自分を出せないことや、理解されないこと。自分が許せないこと。そんな悩みもわいてくる。
そんな時にありのままの自分を受け止めてもらえる存在がいるだけでどんなに癒されるか。
人に話を聴いてもらうと、自分が進むべく道を見えてくる気がする(笑)

この作品をみて、あらためて共感、共有できたことがたくさんあって嬉しいです。

素敵な作品を創りあげたDOOR河口円さん、ステージタイガー虎本 剛さん、役者のみなさんに感謝。

 

 

たかはしみほ

ヨガインストラクター・戯曲作家・パフォーマー

2018年3月3日 ココロの表現者を目指しカルディアを立ち上げる。
2018年10月 浄土宗 應典院のSDN2018の上演作品「きらめきのトキ」の脚本・演出。
2019年9月 心体表現&身体で社会をデザインするカンパニー「HI×TO」に参加。
ココロと身体をつなぐアートセラピストとして活動中。
2020年1月16日・17日 コモンズフェスタにて「心体表現のワークショップ」を開催します。
詳しくはこちら⇒https://www.outenin.com/article/cf2020p/#1031