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2018/4/7-8 速水佳苗:プラズマみかん「シルバー・ニア・ファミリー」 レビュー

4月7日(土)、8日(日)の2日間、應典院寺町倶楽部協力事業としてプラズマみかん「シルバー・ニア・ファミリー」が應典院本堂で上演されました。迫りくる超高齢化社会を全力疾走する、プラズマみかんの記念すべき10回目の本公演。観劇された方々に様々な思いを抱かせるものでした。今回は俳優の速水佳苗さんにレビューを執筆していただきました。


プラズマみかん「シルバー・ニア・ファミリー」を観ました。

 

「私の脚のギアは、母の鳴らすピストルを合図に逆回転を始める。

島を出る時、二度と戻るものかと固く結んだ拳は、母の手元で何度も緩められてきた。」

 

こちらはチラシに書かれていた作品紹介文の始めの一文です。

 

会場は、本堂を縦に割った真ん中がアクティングエリアです。客席はその両側二つに分かれています。観客どうしが舞台を挟んで対面して座る形でした。受付で投票用紙を渡され、会場に入ると選挙カーからの立候補者数名の声が流れていました。

立候補者がでてきて口々に演説するところから公演は始まりました 。ここでは、70才を超えると国民は若者に選挙権を渡すことができ、優先的に介護サービスを受けられる制度があるようです。

 

プラズマみかん主宰で、作演出・出演もこなす中嶋悠紀子さんが演じる主人公真紀は母からの不審な電話で急いで島に帰ります。

島には超大型介護施設「シルバー・ニアの郷」が建設されていました。心配した母はけろっとしたもので、今ががんばりどころの真紀はイライラしながら島から本土へ戻ります。

 

その後、キャパぎりぎりの仕事や生活と必死で格闘しているところに、その母がふわっとやってきて娘の仕事に口を出し、さらっと成功させてしまいます。いつまでも中途半端でなんにも成し遂げられず、島を出たものの仕事さえも結局母に手助けされてしまう。

 

けれどそんな母も齢を重ねて確実に衰えが見え始めている。

再び島に戻った真紀は、母から娘への愛情、絶望のような愛情を、「私」になって振り切り、もう一度島を出て前に進み始めるのでした。

 

島にいる幼馴染の千春をプラズマみかんのせせらぎよし子さんが演じられてました。

終盤、再び島を出ていく真紀に、島に残ると手を振った千春の笑顔とかもうすっかり心打たれました。

高齢者のミタニさん役も選挙のキャラクターのイッピョウ役も、せせらぎさんが演じられていたのですが、どの役もしっくりくる!

今回、ガンガン出てくるわけではなかったのですが、どのシーンもいい塩梅なんです。

プラズマみかんに出演しているせせらぎさんのしっくり具合がすごくてだいたいいつもプラズマみかんを見た後は劇団の力を思い知らされます。

作演出でありながら、真紀役をやった中嶋さんのこの作品に込めた思いも感じたし、 今回は特に二人の力を感じました。

〇レビュアープロフィール

速水佳苗。女優。元france_pan。現在はKOINUという団体で活動中。

最近台本を書いてみました。そろそろKOINUの2回目を・・・と検討中です。