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2017/12/16‐17 應典院寺務局:アート・ミーツ・ケア学会にてキッズ・ミート・アートの実践を報告しました(下)

12月16日(土)17日(日)京都市立芸術大学で開催された「アート・ミーツ・ケア学会2017年度総会・大会」にて、キッズ・ミート・アートの5年間の実践について、應典院より秋田光彦住職・齋藤佳津子、元應典院アートディレクター小林瑠音と福山市立大学の弘田陽介さんによる合同発表を行いました。発表内容の後半をお届けします。___________________________________________________________

保育の外のアートという意味

子どもたちの手に持った伝書鳩をお墓から飛ばすワークショップ

最初にこのキッズ・ミート・アートの企画を呼びかけていただいた、福山市立大学の弘田陽介さんから、「保育の外のアート」というテーマで基盤となる考え方を提示いたしました。弘田さんは当時大阪城南女子短期大学という保育士・幼稚園教諭の養成校にいました。その時、どうしても保育現場での造形製作や音楽活動に違和感をもったそうです。確かにそれらは子どもの発達段階に見合った制作・表現活動なのかもしれない、しかし保育現場でのアートは、もしかすると子どもの可能性とアートの可能性の両方を低く見積もり過ぎているのではないか、というのがその違和感の正体でした。

ならば、アートと子どもが出会う場所を作りたい、というのが、弘田さんとパドマ幼稚園の園長でもある應典院の秋田光彦住職の最初の思いつきでした。ですが、子どもとアートは出会うだけではなく、すれ違いももちろんありえます。保育現場での制作・表現活動は計画され、ある程度うまくできるように設定されていますが、アートにはうまくいかない破調もあるわけです。また、子どももそのアートにうまくなじまないかもしれない。でもあえて、意味の不定性や収まりの悪さから一般には保育実践からは遠ざけられているような事例(例えば現代アート)なども含みこんだ時、アーティストもファシリテーターも、保護者も子どもも想定できなかったものが生まれてくるのかもしれないというその一点に賭けたのです。

インファンスという言葉から想起するもの

その一点とは、生活・生命といった人間にとって基盤になるものを一旦阻害することで生まれる力です。美学の歴史でいうと、「大人/子ども」や「聖/俗」などの仕切りを破壊するような「暴力性」「崇高性」「偶然性」といった言葉で概念化もされてきました。また、幼児は英語ではインファンスと言いますが、これは「言葉をもたない」という意味のラテン語を語源にもちます。言葉をもたない子どもが言葉にならないようなアートに出会う。しかし、その中で他者なる何かに出会うのかもしれないし、またすれ違うものかもしれない。その出会いやすれ違いは、その時の子どものためではなく、もしかすると遠い未来のある時間で、「あぁあれはそうだったのか」と膝を打つものかもしれません。

せんろは続くよどこまでも~木のおもちゃで遊ぼうワークショップ~(写真右・弘田陽介さん)

その後、小林瑠音(神戸大学大学院博士後期課程/元應典院アートディレクター)から2013年からの取り組みについて写真をもとに実践報告をいたしました。

子どもとアーティストとの出会いとすれ違い

2013年から始まったキッズ・ミート・アートでは、身体<見えないイメージを共有する~パントマイムや身体を知る体験~>、描画<イメージをクレパスや墨と筆でとらえる>、造形<様々な素材を楽しむ~編む、彫刻>、音楽<楽譜にとらわれない音~ノイズから仏教声明まで~>、哲学<かんがえる、かたる、はなす~子どもとの哲学対話を楽しむ~>など、具体的な実践をスライドをもとに紹介しました。(以下に主要なものを抜粋)アーティストと子どもたちの出会い方は互いの日常を違う観点から見る<異日常>を交換する作業であり、価値観や感じ方の差異を楽しむ、逸脱したものをズレを持って眺める、ずっと「あれはどういうことだったのか?」と答えがないものを心の中に留めるような時間を創ってきた実践だったとも言えます。

アートミーツケア学会2017(1)

最後に、齋藤佳津子(應典院主査)より、人々が持つお寺の<アフォーダンス>は、やはり「死」や「生」という<死生観>に基づく「ものがたり」にあり、自然とアーティストたちもその「ものがたり」へと収斂されていく様子がみられることを報告しました。飛べる伝書鳩ではなく、飛べなくなった伝書鳩にまつわるワークショップを、また、人々を極楽浄土へと導いてくださる二十五菩薩の装束を子ども達と作成し、30分かけて「南無阿弥陀仏」とだけ唱えて、菩薩になって歩く「練り供養」を行ったことなど説明し、会場からはアーティストの方との仏教の教えなどをどのように共有したのかなどに質問がおよびました。

アートミーツケア学会2017(2)

それぞれ閉鎖的になりがちなアート、演劇、ケア、教育、医療、宗教という様々な領域が出会い、すれ違うことを<アフォード>する実践について、新しい疑問や課題を持ち帰ることができた2日間でした。また、来年へ向けては、應典院や應典院寺町倶楽部、パドマよだけの新しい枠組みでの企画を行う予定で、「市民から門戸を叩いてもらう」ような企画自体にしていくことをお話しました。

 

※ちなみに、この「アホーダンス」にした背景には、関西弁の「あほ」という言葉と、狩撫麻礼原作、たなか亜希夫作画による漫画で、後に松田優作監督・主演で映画化された「ア・ホーマンス」がきっとあると思います。(弘田陽介さん推測)

人物(五十音順)

秋田光彦
(浄土宗大蓮寺・應典院住職)
小林瑠音
(前應典院アートディレクター・京都造形大学非常勤)
齋藤佳津子
(学校法人蓮光学園 パドマ幼稚園・事業センター 主査)
弘田陽介
(大阪総合保育大学准教授)